2023年5月1日配信
山下大介
(株)プライバシーテック 代表取締役
ITでいうところのプライバシーって結局何?
(所属や役職は配信当時の情報となります)
「プライバシー×テクノロジー」という未来を切り開くために起業した
山下氏にインタビュー。
プライバシーの未来は?欧米と日本の違い、倫理観など。
各企業が向き合うべきプライバシーの整理は何?をざっくり解説してもらいました。
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「プライバシー×技術」・・・プライバシーテックって?
新しいテクノロジー領域の一つ「プライバシーテック」。
企業がパーソナルデータを使うときに出てくる、プライバシー上の懸念を解消するためのIT技術です。
2022年に創業したプライバシーテックでは、プライバシーと技術を掛け合わせ、ITを駆使してプライバシー問題に取り組んでいます。
山下氏が「プライバシーを扱う会社」を起業したきっかけは2つあったといいます。
元々「ブログウォッチャー」に勤務していた山下氏。ブログウォッチャーでは、データを拡大する際にブログウォッチャーが提供する
SDK(アプリケーションを簡単に開発するために作られたキット)をアプリ運営企業に導入してもらいますが、
導入に至るまでにはいくつかのハードルがありました。
経済的メリットや事業的メリットについて理解してもらい、最初のハードルを超えても「プライバシーは大丈夫か?」という大きな壁にぶつかるといいます。
その壁を乗り越えるために、社内外の調整や議論を重ね、取引先企業とその消費者が安心できる仕組みを構築したこと。これがひとつ目のきっかけだといいます。
その後、LBMA Japanの設立に関与し、業界全体で統一ルールを作る中で、エンジニアやデータサイエンティストでなくても技術や新しいサービスの創出に貢献できることを実感した山下氏。
他の企業とも協力して新たな動きを作り出すことの面白さを知ったことから、会社を設立しました。
では「プライバシー」とは何か。山下氏は「人に知られたくない情報」だといいます。
日本では個人情報保護法などで守られている「プライバシー」がありますが、その範囲は限定的。
例え法律を準拠していても「人に知られたくない情報」全て守られるというものではありません。
さらに、プライバシーに関わる「不安」「気持ち悪さ」・・・プライバシーテックではそこまでを含めて「プライバシー」と定義しています。
人によって感じ方の違う「プライバシー」をどのように配慮していくのか・・・侵害しないようにするか・・・
企業側には難しい対応が求められます。それを解決するのがプライバシーテックの仕事だといいます。
ユーザーが自分のデータ使用について不安を感じたとき、具体的に説明するなど「コミュニケーションを通じた配慮」。
そしてもう一つがユーザーがデータの使用を拒否できる仕組みを設けたり、そもそも企業側がユーザーを不安にさせないよう、データ使用のガバナンスを強化するなど「仕組みやシステムを使った配慮」です。
こうした手法を組み合わせること「プライバシーの侵害」を防ぎます。
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新規ビジネスで“攻め進める”ために必要な「守り」をサポート
プライバシー配慮の枠組みを作るのを、法務部門の仕事としている企業もありますが、法務部門と事業部門の間にはよくジレンマが生じます。
その原因は法務は「リスク管理」に重点を置き、事業部は「新しい取り組みを進めたい」という相反する考えがあるためです。
このジレンマを解消することにも、プライバシーテックが一役を担います。
例えば、専門的な知識を分かりやすく説明する教育ツールやコンテンツを提供し、事業部が法的リスクを理解できるようにします。
一歩で法務部には、プライバシーに関する最新の知識や観点を提供し、法務の専門家ではカバーしきれない部分を補完します。
こうした取り組みにより、両部門が歩み寄り、共通の目標に向かって協力できる環境を整えることができます。
近年、AI技術の発展が急速に進む中で、特に注目を集めているのがChatGPTのような対話型AIです。
一方でこうした技術の発展に伴い、プライバシー保護の重要性も増しています。
海外の対応を見てみると、EUではGDPR(一般データ保護規則)により、個人データの収集と使用に厳格な規制が設けられています。
AIに関する新たな規制も導入される見込みです。
対して米国ではデータ収集を比較的自由に行うことが可能ですが、データの使用に関しては倫理やガバナンスが重視されています。
CCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)などがその例で、ユーザーがデータ使用を拒否できる権利が強化されています。
一方、日本はというと、柔軟なアプローチを取っています。
プライバシー保護とデータ活用による競争力強化のバランスを取ることを目指した法整備が行われていることは、日本企業にとっては有利な環境が整いつつあるといいます。
将来的には、日本も米国型の方式に進む可能性が高いと予想され、データ活用のビジネスがより活性化することも期待されています。
そうした環境下で、新しいビジネスで“攻め進める”ためにこそ必要な「守り」。
そこを支援するのがプライバシーテックのミッションだと山下氏は話しました。
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