2024年9月23日配信
宇城 学
Guide Robotics株式会社 共同創業者兼CEO
屋内測位:『あったら便利』から『必須』のDXサービスへ
(所属や役職は配信当時の情報となります)
大手半導体メーカーなどでキャリアを積んだ宇城氏らが2020年に立ち上げたGuide Robotics株式会社。
アメリカ・SRIの「Visual-Inertial SLAM」技術を活用した屋内即位システムを開発しています。
現在は主に物流DXや工場DXを支援し、作業効率や安全性の向上を目指したソリューションを提供していますが
今後はインフラ現場や建築現場など、幅広い分野での活用を目指しています。
スタートアップならではのフレキシブルな開発から生まれた機能
そして海外展開などについてのお話も聞かせて頂きました。
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「Visual SLAM」の屋内即位技術で物流DX、工場DXを支援 顧客目線のプロダクト拡充にも注力
2002年に京都出身の宇城氏が共同創業者であるAveek Das氏と共に立ち上げたGuide Robotics株式会社。
宇城氏は京都の大手半導体メーカーで、その後東京の大手商社に勤務。
20年以上大規模な組織で新規事業開発に携わった後、自身で新たなチャレンジをしたいという思いから起業に至りました。
Guide Roboticsでは「Visual-Inertial SLAM」という技術を用いたGPSが届かない環境での屋内測位システムを開発・提供し
主に物流業界や工場のDX化を支援しています。
この技術を活用することで、GPSの届かない倉庫や工場の内部、地下やトンネル内でも
カメラや画像認識技術を活用して、物や人の位置や移動経路をリアルタイムに正確に追跡することが可能となります。
Visual SLAMは軍事用途で長年開発されてきた技術であり、
SRI Internationalなどで20年以上の研究が進められ、現在では産業用途にも応用されています。
現在の技術開発では、エッジデバイスを搬送車両に取り付け、搭載されたステレオカメラとCPUを用いてリアルタイムに画像データを取得、
これをエッジコンピューティングで処理し、座標データとしてクラウドに送信します。
このデータはAPI経由で顧客に提供され、現場の作業や物流フローの可視化を実現します。
このシステムにより、作業の効率化や安全性の向上が図られることが期待されています。
特に大規模な倉庫や工場など、数万平方メートル規模の施設でフォークリフトや牽引車、
人が操作する台車などの搬送車両が多く利用されている場所でVisual SLAM技術を活用すれば、
車両の位置や動きを正確に把握し、作業の最適化に役立てることができます。
Visual SLAMのポイントは、カメラとエッジコンピューティングを組み合わせることでリアルタイムかつ高精度にデータを取得でき
クラウドでのデータ管理・分析を可能にしている点です。
大規模な倉庫や工場では、複数のフォークリフトや牽引車などが稼働しており、
それらがどこで何をしているか把握するのは難しい状況がありますが、このシステムを導入することで
すべての搬送車両がどこにいるかをリアルタイムで正確に把握でき、効率的な運用や作業の最適化が可能に。
ライブデータだけでなく、過去の動線データも提供できるため、特定の日付や時間帯にどの搬送車両がどのような経路を通り
どのような作業を行っていたかを確認でき、作業の改善に役立てることが可能です。
これにより、従来の日報だけでは見えなかった細かな作業内容を明確にすることができます。
他にも、どのエリアで作業が集中していたか、どこで滞留していたかを視覚的に表示し、施設内の作業効率を分析することや、
稼働率の測定だけでなく、その車両が荷物を積載しているか空走行しているかといった作業内容の違いも把握できます。
これにより、稼働率が高くても実際に生産的な走行がどれくらいであったかを可視化し、より正確な効率を分析することが可能となります。
ほかにも、各ドライバーの平均スピードや、走行距離を数値化する機能や、
そこに燃費データやCO2排出量と組み合わせることで、環境負荷の低減にも貢献する機能など、
物流DXや工場DXを推進する上で、効率的かつ安全な作業環境を構築するための強力なツールが揃っています。
こうしたプロダクト機能の拡充は、顧客のフィードバックがベースとなっていて、
その要望に応えるスピード感こそが、スタートアップとしての利点だといいます。
Guide Roboticsではたとえ開発コストがかかっても、長期的な視点でみれば、知識やプロダクトの進化に繋がると考え
顧客のニーズに積極的に対応してきました。
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「あると便利」から「必須な技術」に。多方面でのDX化・自動化を支える
屋内測位技術の市場は、物流や工場といった大規模な産業分野で需要が高まっているものの、
現時点ではまだニッチなアプリケーションとされています。
しかし、今後のDXや自動化の進展に伴い、この技術はますます重要な役割を果たしていくことが予想されます。
現在は「あると便利な技術」として捉えられているかもしれませんが、将来的には必須な技術として多くの産業で採用される。
こうした状況下でGuide Roboticsではブランド力を高めつつ、この技術の認知度を海外展開も含めて展開していくことに注力しています。
インターナショナルなチーム体制を活かし、世界中の産業のDX化や自動化に貢献できる技術として
この市場においての地位を確立することが現在の目標です。
そしてその技術は物流・工場以外の分野での展開を目指しています。
現在も高速道路公団と実証実験に向けた契約が進んでおり、
年内にはトンネル内でのメンテナンス作業者の位置把握に関する実証実験を行う予定です。
また、建築現場でもロボットを活用した検査作業の自動化に関する実証実験が進んでいて、
来期以降、量産に向けた開発が本格化する予定です。
今後も物流にとどまらず、インフラや建築分野などにも幅広い分野でのDXと自動化の推進に貢献していきたいと考えています。
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